職場環境・人間関係2026-08-18監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

介護職の人間関係の悩み、北陸の現場で使える対処法と相談先

この記事の要点

「もう、あの先輩と同じ時間帯に入るのがつらくて……」

先日、北陸のある特養で働く30代の女性職員の方からこんな相談をいただきました。ご本人が特定されないよう内容は一部変えてお伝えしていますが、骨格はそのままです。仕事の内容自体は嫌いじゃない、利用者さんとの関わりにもやりがいを感じている。でも特定の先輩職員との折り合いが悪く、出勤前にお腹が痛くなる日が増えていた、というお話でした。

結論から言うと、介護職の人間関係の悩みは「辞めたくなる理由」としてかなり上位に来るテーマです。公益財団法人介護労働安定センターが実施している介護労働実態調査では、前職(介護職)を辞めた理由として「人間関係に問題があったため」を挙げた割合が例年およそ2割前後で推移しており、離職理由のなかでも上位グループに位置づけられています。収入や体力面の理由と並んで、決して珍しい悩みではないというのがまず押さえておきたい前提です。

ただし、辞める・辞めないの二択で焦る必要はありません。僕がこれまで北陸の介護職の方のキャリア相談を受けてきた中で見えてきたのは、対処の「型」を知っているかどうかで、その後の展開がかなり変わるということです。今日は北陸の現場で起きやすい人間関係トラブルの型から、自分でできる対処、異動・転職を検討すべきサイン、相談先の使い分けまでを順番に整理します。

0. まず結論:人間関係の悩みは離職理由の上位だが、動き方には順番がある

先ほどの調査結果が示すとおり、人間関係は介護職の離職理由として無視できない割合を占めています。ただ、僕の体感値で言うと、実際に転職や異動という決断に至る前に「もう少し早く試せる対処があったのでは」と感じるケースが少なくありません。感情的に「もう無理」となってから動くのと、事実を整理して段階的に動くのとでは、その後の職場選びの精度がまったく違ってきます。まずは焦らず、今の職場でできることから確認していくのがおすすめです。

1. 北陸の介護現場で起きやすい人間関係トラブルの型

北陸の介護施設は、特養や老健であっても1フロアあたりの職員数が10〜20人規模というところが少なくありません。都市部の大規模施設のように部署やシフトが細かく分かれていない分、苦手な相手とも顔を合わせる頻度が高くなりやすいのが特徴だと僕は感じています。

相談を伺っていてよく出てくるのは、次のような型です。

先ほどの30代女性のケースも、実はこの2つ目と3つ目が重なったパターンでした。ご家族から強い要望が出た際の対応方針を巡って先輩と意見が食い違い、そのまま気まずさが日常の関わりにまで広がってしまっていたのです。

2. まず自分でできる対処:距離の取り方と「事実だけを伝える」報告のコツ

いきなり異動や転職を考える前に、僕がまずおすすめしているのは次の3つです。所要時間の目安も併せて書いておきます。

2-1. 感情と事実を分けて記録する(1日5分・1週間続ける)

「感じが悪かった」ではなく「〇月〇日、申し送りの際にこう言われた」という形で、日時と具体的なやり取りをメモに残しておきます。これは誰かを告発するためではなく、後で誰かに相談するときに「思い込みではなく事実として伝わる」ようにするための準備です。感情のまま伝えると受け取る側も身構えてしまい、話がこじれやすくなります。スマホのメモアプリに箇条書きで残すだけで十分で、1回あたり5分もあれば書けます。

2-2. 直属の先輩ではなく、その上の相談ルートを一本作っておく(準備は1回・30分程度)

小規模な職場だと、相談相手が結局トラブルの当事者に近い立場だった、ということが起こりがちです。主任やユニットリーダーだけでなく、施設長や法人の相談窓口など、当事者と少し距離のある相談先を事前に把握しておくと、いざというときに動きやすくなります。先ほどの女性のケースでも、法人本部の担当者に事実ベースで状況を伝えたところ、シフトの組み方を調整してもらえたそうです。

2-3. ありがちな失敗:同僚に愚痴として広めてしまう

僕が相談を受けていて一番もったいないと感じるのが、記録した事実を「相談」ではなく「愚痴」として同僚数人に広めてしまうケースです。共感は得られても状況は変わらず、むしろ職場内の派閥のような空気を生んで、後から本人が動きにくくなることがあります。事実は記録したら、まず相談ルートに乗せる。これが遠回りのようで一番早い、というのが僕の実感です。

2-4. もう一つの失敗:全部を一人で抱え込み、体調を崩してから相談する

逆に、記録も相談も「もう少し我慢できるから」と先延ばしにし続け、体調を崩してから初めて周囲に打ち明ける、というケースも見てきました。ある40代の男性職員の方は、不眠が3か月ほど続いてから初めて上長に相談したのですが、そこまで我慢しなくても、もっと早い段階で一言伝えていれば配置の調整だけで済んだかもしれない、と後になって話していました。事実の記録と早めの一言は、我慢強さとは別の話だと僕は考えています。

3. それでも変わらない時に見るべき3つのサイン

対処を試みても状況が変わらない場合、次のようなサインが出ていないかを確認してみてください。我慢を続けていい状態か、次の一歩を考える段階かの目安になります。

サイン具体例取るべき行動の目安
体調に出ている出勤前の腹痛・不眠・食欲不振が続くまず職場より先に、体調面の相談を優先する
特定の1人が原因で全体を避けているその人がいる日は同僚全員との会話も減る法人内の相談窓口・異動の相談を検討する
相談しても法人側が動かない報告してもシフトも体制も変わらない状態が続く外部の相談窓口・転職エージェントの利用を検討する

僕は候補者の方に、対処を試みてから3か月ほどを目安に振り返ってみることをおすすめしています。1〜2週間では環境がすぐ変わらないことも多いですが、3か月経っても状況に変化が見られない場合は、今の職場に留まり続けることが最善とは言えなくなってきます。逆に言えば、体調にはっきりとしたサインが出ている場合は3か月を待たず、その時点で動き始めてよいと僕は考えています。

4. 異動・転職、北陸ならではの動きやすさとタイミング

ここで北陸ならではの事情を一つお伝えしておきます。北陸は都市部に比べて事業所の絶対数は多くありませんが、社会福祉法人や医療法人が特養・老健・デイサービスなど複数の事業所を同一法人内に持っているケースが目立ちます。これは僕の体感値ですが、同じ法人内であれば人事担当者も事情を把握しやすく、都市部よりも法人内異動の相談がスムーズに進みやすい印象があります。

実際に僕が見てきた3つのケースを比べてみます。同じ「人間関係のこじれ」が理由でも、状況によって選んだ道が違いました。

ケース状況選んだ道その後
Aさん(40代・特養)特定の先輩との相性が悪く、業務のやり方で衝突が続いた同一法人内の別事業所(デイサービス)へ異動制度や給与体系は維持したまま、半年後には落ち着いて勤務を継続
Bさん(20代・老健)相談しても法人側が体制を変えず、同様の訴えが他の職員からも出ていた法人ごと変える転職を選択面接時に前職の状況を正直に伝え、少人数職場の雰囲気を事前確認できる法人へ転職
Cさん(30代・有料老人ホーム)先輩との関係は改善したが、その過程で今の業務量に限界を感じ始めていた同一法人内で夜勤なしのユニットへ異動を打診人間関係とは別の負担にも早めに気づき、働き方ごと見直すきっかけになった

Aさんのように「相性の問題」であれば、慣れた法人の制度や福利厚生を維持したまま環境だけ変えられる法人内異動が近道になりやすいです。一方でBさんのように、相談しても法人側が改善しようとする姿勢を見せず、同様のトラブルが複数の職員から出ているようなら、法人そのものを変える転職を検討したほうが早い解決につながることもあると僕は考えています。Cさんのように、人間関係の悩みをきっかけに自分の働き方全体を見直すことになる、というのもよくある展開です。

5. 一人で抱えないための相談先の使い分け

最後に、相談先ごとの特徴を整理しておきます。悩みの中身によって、適した窓口は変わってきます。

相談先向いているケース北陸での使いやすさ
法人内の相談窓口・上司の上長シフト調整や配置換えで解決できそうな場合複数事業所を持つ法人が多く、異動の相談がしやすい
都道府県労働局の総合労働相談コーナーハラスメントなど法令に関わる可能性がある場合無料で相談でき、石川・富山・福井の各県に窓口がある
介護職に詳しい転職エージェント職場を変える前提で条件面から探し直したい場合地域の求人事情や法人ごとの雰囲気に詳しい担当者に当たれることがある

都道府県労働局の総合労働相談コーナーに相談する際は、先ほど2章で触れた「日時と具体的なやり取り」の記録を持参すると、状況が伝わりやすく話が早く進みます。感情のまま口頭で伝えるより、事実として整理されたメモがあるだけで、相談員の受け取り方が変わってくるというのが僕の実感です。

先ほどの女性のケースでは、まず法人内の相談窓口でシフト調整という形の対処が功を奏しましたが、これがうまくいかない場合は次の段階として外部の窓口を使う、という順番で考えておくと、一人で抱え込まずに済みます。相談先を変えるタイミングに迷ったら、先述の3か月という目安を一つの区切りにしてみてください。

(結論)

介護職の人間関係の悩みは、公益財団法人介護労働安定センターの調査でも離職理由の上位に入るほど、多くの方が経験しているテーマです。北陸は少人数の職場が多く、一度こじれると逃げ場を感じにくい一方で、同一法人内に複数の事業所を持つケースが多く、異動という選択肢が現実的に取りやすい土地でもあります。まずは事実を記録し、直属以外の相談ルートを一本作ること。それでも3か月ほど変化がなければ、Aさん・Bさん・Cさんのように法人内異動か転職かを具体的に検討する段階だと僕は考えています。一人で抱え込まず、法人内外の相談先を状況に応じて使い分けてみてください。皆さんいかがでしたでしょうか。では今日もがんばりましょう。

よくある質問

Q. 介護職の人間関係の悩みは、我慢して働き続けるべきですか?

我慢一択ではありません。公益財団法人介護労働安定センターの調査でも人間関係は離職理由の上位に入る項目で、皆さんだけの特殊な悩みではないというのがまず前提です。ただし辞める前に、事実ベースで報告するルートを作る、直属以外の相談先を使うといった対処を試す価値はあります。それでも3か月ほど様子を見て変化がなければ、法人内異動や転職を具体的に検討する段階だと僕は考えています。

Q. 北陸の介護施設は人間関係のトラブルが起きやすいのでしょうか?

起きやすさというより、逃げ場の作りにくさが特徴だと僕は見ています。北陸は職員数10〜20人規模の施設が多く、一人との相性が悪いとフロア全体で顔を合わせる頻度が高くなりがちです。一方で同一法人が複数事業所を持つケースも多く、法人内異動という選択肢が都市部より現実的に取りやすい面もあります。

Q. 職場に相談しても改善しない場合、どこに相談すればいいですか?

社内の相談窓口で動きがない場合は、法人の本部担当者、都道府県労働局の総合労働相談コーナー、介護職に詳しい転職エージェントの3つを状況に応じて使い分けるのがおすすめです。法令に関わる話なら労働局、働き方や求人の選び直しなら転職エージェントというように、相談内容で窓口を変えると解決が早まりやすいと感じています。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

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