子育てと両立できる介護職、北陸の時短勤務・シフト調整の実態
- 総務省の統計で福井・富山・石川は共働き世帯比率が全国上位とされ、北陸の介護現場は子育て世代の勤務調整に慣れている土壌がある。
- 育児・介護休業法により3歳未満の子を持つ介護職員は原則1日6時間の短時間勤務を申請でき、法律で保障された権利として交渉できる。
- 施設形態別では訪問介護やデイサービスは夜勤がなく両立しやすい一方、特養は夜勤月4〜5回が目安で、有料老人ホームも含め調整力の見極めが重要になる。
「子どもが熱を出したら、誰がお迎えに行くんですか」——先日、僕が同席した北陸のある特別養護老人ホームの面接で、採用担当がそう尋ねる場面がありました。
結論から言うと、北陸の介護職は子育てとの両立がしやすい業界だと僕は考えています。理由は単純で、施設側がすでに人手不足という現実と正面から向き合っていて、短時間勤務や急な休みへの調整実績が積み上がっているからです。総務省「令和4年就業構造基本調査」では、福井県・富山県・石川県はいずれも共働き世帯の比率が全国上位に位置づけられており、地域全体が「働く親」を前提に暮らしの制度設計を進めてきた土壌があります。ただし、この両立のしやすさは施設形態や職場の運用実績によって大きく変わるというのも、僕が現場を見てきた実感です。
0. 「両立できますか」という質問の裏側にあるもの
冒頭の面接の場面に戻ります。採用担当がその質問をしたのは、意地悪をしたかったからではありません。むしろ逆で、「入職後にすれ違いが起きないように、今のうちに確認しておきたい」という配慮からの質問でした。介護現場は数時間単位で人員配置が決まっているため、急な欠勤が一人出るとその日のシフト全体に影響します。だからこそ、面接の段階で子育てとの両立イメージをすり合わせておくことは、応募者にとっても施設にとっても入職後のミスマッチを防ぐ重要な工程だと僕は考えています。逆に言えば、この質問をしてこない施設のほうが、実は要注意かもしれません。両立の実績や体制が整っていない職場ほど、そこに踏み込まずに採用してしまう傾向があると僕は感じています。
近い経験を持つ方の話として、以前パート事務として働いていた30代の女性のケースがあります。子どもの発熱で年に何度か急な休みを取らざるを得ない状況を面接で正直に伝えたところ、採用担当は「うちも子育て世代が多いので、お互い様の文化があります」と即答し、実際に入職後も同僚同士でシフトを融通し合っていると聞いています。こうした具体的なやり取りができる施設かどうかは、面接の空気だけでもある程度伝わってくるものです。
1. 北陸で子育て世代が介護職を選ぶ理由と現場の実態
公益財団法人介護労働安定センター「令和5年度介護労働実態調査」によれば、訪問介護員の女性比率は8割超、施設系の介護職員でも7割前後という水準が報告されています。これは製造業や建設業といった女性比率が3〜4割台にとどまる業種と比べると、突出して高い数字です。介護という仕事自体が、もともと家庭責任を担ってきた人たちの参入を前提に人員体制が組まれてきた業界だとも言えます。
加えて北陸は、前述の共働き率の高さに加え、三世代同居や近居の割合が全国平均より高い地域でもあります(総務省「令和2年国勢調査」の世帯構造データでも北陸3県は三世代世帯比率が上位に入ります)。祖父母世代が近くにいることで急な迎えを分担できる家庭環境が、地方特有の両立のしやすさを支えている側面もあると僕は見ています。もちろんこれは地域差・家庭差が大きい話なので、「北陸だから安心」と一般化はできませんが、都市部よりも周囲の助け合いが機能しやすい土壌があるのは事実だと思います。僕の体感値で言うと、デイサービスの求人は他の施設形態に比べて「時短相談可」の記載がある募集が多い印象で、子育て世代の応募が集中しやすい傾向があります。
2. 法律で保障された時短勤務、実際にどう使うか
育児・介護休業法では、3歳未満の子を養育する労働者に対して、事業主は原則として1日6時間の短時間勤務制度を設けることが義務付けられています。加えて、所定外労働(残業)の免除も、3歳未満の子を持つ従業員からの請求があれば事業主は原則応じなければなりません。小学校就学前の子については、時短勤務や時差出勤などの措置を講じることが事業主の努力義務とされているため、企業によって対応にばらつきが出やすい領域です。
実務上のポイントは、この制度を「使えるかどうか」を面接時点で曖昧にしないことです。僕が候補者に伝えているのは、「時短勤務の対象年齢と、実際に利用している職員が今何人いるか」を具体的な数字で聞くという方法です。制度としては存在していても、実際の利用実績がゼロに近い職場では、いざ自分が申請したときに周囲の理解を得づらいという声を現場から聞くことがあります。制度の有無ではなく、運用の実態まで踏み込んで確認することが、両立を考えるうえでの最初の一歩になると僕は考えています。
両立を考えている方に、今日からできる具体的な確認方法を3つ挙げておきます。
- 求人票の「福利厚生」欄に「時短勤務制度あり」だけでなく利用実績の記載があるか確認する。
- 面接で「今、時短勤務や時差出勤を使っている職員は何人くらいいますか」と数字で質問してみる。
- 可能であれば施設見学で、日中の職員体制や子育て中の職員の勤務時間帯を直接見せてもらう。
3. 施設形態別、両立のしやすさを比較する
ひとくちに介護職と言っても、施設形態によって夜勤の有無やシフトの組み方はまったく異なります。両立のしやすさを考えるときは、まずこの違いを整理しておくと判断しやすくなります。
| 施設形態 | 勤務時間の特徴 | 夜勤 | 急な休みへの対応 |
|---|---|---|---|
| 訪問介護 | 直行直帰・訪問件数に応じた変動制 | 基本なし(オンコール対応がある事業所も) | 代行訪問の調整で対応できる事業所が多い |
| デイサービス | 日勤のみ・営業時間内で固定 | なし | 職員数が多い施設ほど代替が立てやすい |
| 特別養護老人ホーム | 三交代制・夜勤は月4〜5回が目安 | あり | 夜勤専従者への配置や時短勤務者の日勤固定で調整 |
| 有料老人ホーム | 二交代〜三交代・施設ごとに幅がある | ありが多い | 小規模施設ほど代替要員が薄い傾向 |
| グループホーム | 少人数体制・宿直に近い夜勤形態も | あり(形態は多様) | 職員数が少ない分、個別調整力に依存 |
表を見てわかる通り、訪問介護やデイサービスは夜勤がない分、生活リズムを整えやすいという利点があります。一方で、特養や有料老人ホームのような夜勤ありの施設は、月4〜5回程度の夜勤を前提とした働き方になるため、子どもの年齢や家族の協力体制によっては負担が大きくなる場合があります。ただし僕が見てきた限り、夜勤ありの施設でも、時短勤務者を日勤専属に固定したり、夜勤専従者を別に採用したりする形で調整している職場は一定数存在します。夜勤の有無だけで一律に判断せず、その施設が実際にどう調整しているかまで確認する価値はあると思います。また、小規模な有料老人ホームでは職員数が10人に満たないケースもあり、一人が急に休むとシフト全体への影響が大きくなります。逆に大手法人が運営する大規模施設では、フロアごとに応援体制を組める分、急な休みにも対応しやすい傾向があります。施設の規模も、夜勤の有無と合わせて確認しておきたいポイントです。
4. 求人票・面接でここを見れば両立可否がわかる
ここまでの制度と施設形態を踏まえたうえで、実際の求人票や面接でどこを見ればいいのか、僕が候補者に伝えているチェックポイントを整理します。
- 時短勤務・育児短時間勤務の利用実績が「制度あり」ではなく「実際に◯人利用中」と具体的に答えられるか。
- 有給休暇の消化率や、子どもの行事(入学式・参観日など)での休暇取得実績が語られるか。
- 職場の平均年齢や子育て世代の比率がある程度共有されるか(若い世代ばかりの職場では両立文化が根付いていない場合がある)。
- 急な欠勤が出た際の代替要員の確保方法が、具体的なオペレーションとして説明されるか。
僕の体感値で言うと、これらの質問に即答できる採用担当がいる施設ほど、実際の両立支援も機能していることが多いです。逆に「これから整備していきます」という回答が続く場合は、制度自体は将来的にできても、今すぐの両立には向かない可能性があります。僕が北陸で支援してきた中で、最も両立がうまくいったケースは、面接の時点で「子どもの学校行事は年間で埋まっている日程を先に共有してもらえれば、シフト調整で対応します」と施設側から具体的に提案があったケースでした。逆にうまくいかなかったケースでは、入職後に「他のスタッフの目もあるから」と時短勤務の申請をやんわり止められ、結局早期退職に至った例もありました。制度の有無だけでなく、職場の空気感まで含めて確認することの重要性を、この2つの事例が物語っていると思います。
(結論)
北陸の介護職は、共働き率の高さや近居・同居世帯の多さといった地域の土壌に加え、女性比率の高い業界構造そのものが、子育てとの両立を後押ししてきた面があると僕は考えています。法律で保障された短時間勤務・残業免除の権利を正しく理解し、施設形態ごとの夜勤の有無や調整力を比較したうえで、求人票と面接で「制度の有無」ではなく「運用の実態」まで確認する。この積み重ねが、両立を絵に描いた餅で終わらせないための現実的な進め方だと思います。
皆さんいかがでしたでしょうか。子育てと介護職の両立は、施設選びと確認の仕方次第で十分に現実的な選択肢になります。では今日もがんばりましょう。
よくある質問
Q. 介護職と子育ての両立は北陸でも現実的にできますか?
結論として、可能なケースは多いと僕は考えています。北陸は共働き率が全国上位で、施設側も短時間勤務や夜勤免除の実例を積み上げてきました。ただし施設形態や職場の子育て世代比率によって難易度は変わるため、求人票や面接で実際の利用実績を確認することが前提になります。
Q. 短時間勤務は誰でも使える制度ですか?
育児・介護休業法上、3歳未満の子を養育する労働者は原則として1日6時間の短時間勤務制度を申請できる権利があります。小学校就学前の子については努力義務にとどまる企業もあるため、対象年齢と施設ごとの運用実績を事前に確認しておくと安心です。
Q. 夜勤がある施設だと子育てとの両立は難しいですか?
夜勤があるからといって一律に難しいとは言い切れません。特養や有料老人ホームでも夜勤専従者への配置転換や時短勤務者の日勤固定で調整している職場は僕の知る限り一定数あります。ただし職員数が少ない小規模施設ほど代替要員が薄く、調整力に施設差が出やすい点は留意すべきです。
IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。